秋晴れの中、お袋が入所しているグループホームの秋の家族会が開かれた。
私は施設の役員を仰せつかっている為、家族会が始まる一時間前から、会議室でちょっとした会合がある。

グループホームに入所するのは認知症の老人ばかりである。
会合を終えて会場に出て来たら、私の母親を初めとして、老人たちは一様に無表情な顔で椅子に座って、いや座らされていた。
どの老人も、これから何が始まるのか、到底理解しているとは思えない。
とは言え、いずれ通る道なのだ。
かくいう私も10年後、あの椅子に無表情に座っているやもしれぬ。
「お袋、待たせたな。」(私)
「これから、なんばすると?」(母)
「これから、皆で・・・」(私)
一緒に昼食を食べ、ゲームをして、興に乗ればカラオケまで歌っちゃうと言う催しが始まるのだ、
と、話して聞かせるも、

30秒後には、
「なんばするとね。」(母)
「あのね、これから皆で・・・」(家内)
同じ会話が延々と続くのは、いつもの事である。

「お義母さん、こっち向いて。ほら笑って、パシャリ」(家内)

食事が運ばれてきた。
どれも職員手作りのものだ。
お袋が普段食べている食事の味付けが、これで分かるというものだ。

「あ、お義母さん。箸がまだ来とらん。まってまって!こぼすったら。(笑)」(家内)
箸が来るまで、お袋と家内の攻防戦は繰り返される。
「お袋、かつれとるやん。(笑)」(私)
『かつれる』とは、こっちの方言で『腹を空かせて我慢できない様子』を言う。
だが、お袋がかつれるのも頷けるのだ。
どの料理も、柔らかくよく煮込まれ、味付けはどこか懐かしく、食べ飽きない美味しさなのだ。
「美味しかね、お義母さん。」

かつれていたお袋は、ほぼ完食。
「お腹いっぱいになった。」(母)

と、言いながら、
好物のぜんざいの為に、胃袋の隙間は空けといたらしく、これも完食。
施設から、最近食欲があんまりないとの報告を受けていたが、どうしてどうして、この日は驚くほどの食欲である。

ビンゴゲームで景品を取りに行くお袋。
お袋は9月で満94歳を迎えた。
アッパレと言ってやっていい。
だが、元気元気と思っていても、つい数日前には施設で倒れ、救急車のお世話になっている。
その時は、一過性の貧血で心配は無かろうとの事ではあったが、何しろ高齢だ。
油断は出来ぬ。
3時間程で催しも終わった。
んじゃね。また来るけんね。