「もしもし、整形外科外来の〇〇ですが。」
「あ、午前中はどうも。」
「実はですね。今日のMRI画像ば精査したらですね。恥骨に癌と疑わしい・・・」
「へっ?」
順を追って説明する。
5月28日
最近、股関節痛の治療に通っている整形外科に対し、不満と不信が募ってきた。
具体的理由は今回の主題ではないので省くが、この際思い切って転院する事にした。
新しい病院は、久留米でも指折りの総合病院だ。
整形外科外来で、これまでの経緯を説明。
「そんなこんなで、最近は痛みの質が少し変わってきたようで。」
「わかりました。取り敢えずMRIば撮っておきましょか。」
検査を終え画像の説明をする医師。
「まあ痛みはこの辺でしょうね。狭くなってますね。バッテン、まだ手術の時期じゃなかです。」
「そうですか。山登りとかは、どの程度ならよかですか。」
「そうですね。低山ならよかち思いますよ。」
「登ってよかですか!」
そんなのどかなやり取りがあった夜の事····
冒頭へ続く。
「専門の先生とも相談したとですよ。そいでですね。これが転移性の癌なら、原発部位ば捜さんといかんですから。」
「ははあ。」
どこか他人事のように医師の声を聞く私である。
スマホを置きながら家内に、
「癌かもしれんげな。」
「・・・・・・」
4月30日
CT検査である。
この日から担当医師が、呼吸器内科に代わる。
整形外科の医師が言う『専門の先生』だ。
医師は撮り終えたCT画像を指さし、

「う~ん。これでみると異常はなかごたる(ないみたい)ですね。」
「そうですか。」
「どうでしょう。PET診断もしてみらんですか。そこまでして、何もなければ大丈夫やけん。」
『そんならCTとかせんで、最初からPETにしとけば良かったやん!』
なんて皮肉の一つも言いたいところだが、ぐっと堪えて、その言葉を飲み込んだ。
何しろ『癌かも知れない』という不安を人質に取られているのだ。
医師に従うほかはない。
「じゃあ、そうして下さい。」
「そうですね。そげんしたら私も安心できるけん。」
どうして私が、この医師を安心させてやらねばならぬのか、全く理解できないが、
ともかくも再度、医師の進めに従うことにした。
5月14日
PET検査の日。
検査薬を注射され、50分間の安静の後検査台へ。
検査が終わり、40分程して結果が出た旨が告げられる。
まさに固唾をのむ瞬間である。

「この度は、残念ながら・・・」
「ええー!!」
・・・嘘だ。
「やっぱ異常なかですね。癌の可能性は極めて低いです。」
「恥骨が変色してるのは?」
「加齢性のものか、炎症なのか。分からんです。」
「・・・・・・」
2度の癌検査で、基本的なエコー検査や血液検査は勿論、CTからPETと段々と費用が膨らんでいく。
まるで逆わらしべ長者である。
若干癪には障るが、さすがにこれで安心して良かろう。
いずれにしてもだ。
『癌』という単語が現実味を帯びる年齢になったのは間違いない。