宝満山に登った。

いつものコースをてくてくと登っていると、楽しそうに話している30代半ばのカップルに追い付いた。
耳をそばだてて会話の内容をよく聞いていると、どうやら夫婦ではあるらしい。
楽しく話しながらの山登りは結構なことだ。
それについてとやかく言うつもりはないが・・・
男が気持ち悪いほど、相手に優しいのだ。
頻繁に
「あ、そこ危ないよ。気をつけてね。」
と言う。
そんなとこが危ないなら、横断歩道だって渡れやしないぞ。
と、
私も度々、心のうちでつっこまねばならない。
あるいは、
道の右側と左側のどちら側を歩くかで、段差が違ってたりして登りやすさに違いがありがちだが、
前を行く彼女が楽な方を選んだだけで、
「あ、さーすが。正解!」
いやいや、幼稚園児だって、そっち側を選択するって。

(この岩の支えは絶対に信用できない、と思っているのは私だけだろうか?)
お互いが話しをすると言うより、一方的に男が心配したり、褒め称えたりしているのだ。
「あ、そこからは歩きにくいから、そこで待っててね。僕が先にいくね。」
ウヒャー、鳥肌が立ってきたぜ。

気持ち悪いやっちゃなー。
あ!
わかったぞ。
さては・・・
私の妄想は止まらない。
なーんか隠してんな。
このやろう!
浮気したか!
奥さん、こんな男信じちゃいけませんぜ!
なんて言葉が、自分の口をついて出てこないか、心配になってきた。

一人歩きの退屈しのぎで、超スローペースのカップルの後を登っていたが、とっとと追い越した方がよさそうだ。
今日は、山頂近くの分岐は、いつもと違う女道という方を選択した。
何故かというと、こっちにはキャンプ場があり、トイレがあるからだ。

女道という名前の割には、遙かにこっちの方が難所が多い。
それはいい。
いや、それどころではない。
スローペースな浮気男の後について歩いていた辺りから、オシッコをもよおしてはいたのだ。

愛敬の岩
目を閉じて岩まで行けたら恋が成就するのだそうだ。
つーか、
目を閉じて岩まで行ったら、かなりの確率で崖から落ちるぞ。
生き残った奴だけが、恋が成就するってか。
理には適っているけどな。
と、またも心で呟くも、
い、いかん!
本当に、にっちもさっちもいかなくなった。
急げ!

山城跡の石垣の上にキャンプ場はある。
トイレに駆け込んだ。
フーーーー
セーフ

足取りも軽く頂上を目指す僕ちゃんであった。

この鎖場をよじ登れば頂上である。

またかよ!
と、言いたい気持ちは分かるが、自撮りは、私の頂上についてのルーティンである。
辛抱してもらおう。

何よりの楽しみ、山頂コーヒー。
今日は、浮気男との出会いあり、切羽詰まった尿意ありと、大変だったぜ

下り道。
途中からいつもの山道ではなく車道で下りた。
車道で下りたお目当ては、カエルの階段ではなく、こっちを見ておきたかったのだ。

この地に最澄建立の宝塔があったと言う。
最澄と宝満山は実は関係が深いのだ。
下山。
今日の結論。
浮気男の行く末を案じたい。